飛ばない昆虫が、水にうかぶ浮き草の上にぽつん。
流れ寄る浮き草が、唯一の次なる一歩。
また流れ寄る葉へ、一歩。
何歩も先を見ることに意味など感じることもなく、
目の前にあらわれる輝いた次の一歩をただ大切に踏みしめて、
生きている実感をからだにしみこませる。
非日常と錯覚の日々。
飾っておきたくなるような、美しい瞬間の連続。
それが決して日常ではないことは十分にわかっていた。
力をいれすぎると、浮き草はひっくりかえって
あっというまに水に落ちるから。
だけど、もしもね。
それが永遠に覚めない錯覚なら、
それは真実といってもいいんじゃないかな