どうしているだろう と、ふと思い出す頃、
彼女は私のアトリエをノックする。
どちらが誘導するでもなく、
私たちは静かにゆっくりとした時間を共有する。
私はこれでいい
と自分自身を受け入れてあげることが
彼女にとってなぜこんなにも難しいことなのだろう。
環境に恵まれ、たくさんの愛情もうけ、昔の傷も笑い事である今、
どうして彼女は満腹になれずに未来に飢えているのだろう。
そして、どうして他人のストーリーに自分を重ねない限り
思い切り泣くことすらできないのだろう。
彼女が追い求めている幸福が、
薄っぺらいかたちだけのものだということは、
彼女自身が気付いているはずなのに。
全身の力をぬいて、寄りかかってそのまま溶けるように心をあずけられる場所はきっとどこかにあるよ。
その場所が見つかるまで、いつでもアトリエに来てください。
手にはなにもにぎらずに。