月刊ARTcollectors(アートコレクターズ)の4月号(2015年3月25日発売)のPreviewコーナーに掲載いただきました。
↓↓ 以下、掲載記事文面 ↓↓
人間の内面に迫る絵画
初個展以来、注目度を高めている古河原泉の新作展が開催される。
今回の出品作を見ると、これまでの女性像との微妙な変化に気づく。
そのひとつは、色彩がより輝きを増してきたことだ。十二色環を自由に使いこなした画面は、教会の内部を彩るステンドグラスのような、精神性の宿った不思議な光を秘めている。
「変化を続ける日々の中で、そのときその瞬間に感じるリアルタイムの視点・感覚をもって表現していれば、おのずと生きた色彩の世界を作り続けることができる、そう信じています。それがネガティブな印象の色彩だったとしても、その時の感覚に正直な結果であればそれでいい、それでこそ生きた色彩であると思うのです」 ある時は情熱的に、またある時は瞑想的に。
彼女の言う「生きた色」は、それ自体で人の感情を暗示し、ストーリーを生み出している。
ふたつめに気づいたことは、これまでは力強さが強調されていたが、今回は女性達の表情や仕草がしなやかになり、エロティックな香りを放ち始めたことだ。
「これまでは、女性の内面の強さをそのまま表現したかった。でもそれには、限界を感じたのです。人の根っこにある清く澄んだものを、もっともっと深いも のとして表現するには、その対極にあるような要素をぶつけていくことではないかと気づいたのです。それが私にとっては、これまで避けていた『女性らしさ』 や『エロティックさ』等の要素でした。その要素をぶつけ、より人らしさのある内面に食い込んだ表現をすることが、今回の展覧会でのチャレンジです」
線に思いを込めて描くというドローイングでは、瞬間の発見を切り取り、一方タブローでは、そこに色彩を盛り込んで追求、実験をするという古河原。
「生かされていることの本当の意味とは何だろう」と考え、日々、キャンバスに向かう彼女にとって、制作はすべて「過程」であるという。つまり作品とは、作業の結果はない。そこで完結するものでもない。
キャンバスは、生きている彼女の心の揺らぎを映し出す、生きたスクリーンである。 静止した絵画でありながら、古河原の絵の中は何かがいつもうごめいている。
未来に対する予感と、計り知れない潜在力を抱えた新作群に、是非期待したいと思う。 (編集部)