表現以前に重要な部分が薄れていると自覚したのはここ数ヶ月。
オリジナリティある表現、主張すること＝アウトプットにばかり意識が向いていた。
今の自分に必要なのは、どう表現するかということ以前に、いかに「感じるか」であることに気づいた。

「人生」という、限られた時間を生きる女たち。
時間の流れとともに、環境・肉体・感覚...その変化は逃れることのできない必然のもの。
その過程で彼女たちの身におこっているものは、前後左右過去未来の時間の移動だけではなく「深化」。
たくさんのエクスペリエンスから成る感覚のレイヤーが、彼女たちの内面にある宇宙に積まれてゆき、深みを増し続ける。そうしてその先....いきつくところとは？
容易に導き出せるはずもないその答えを、
そのときどきの感覚で私が模索した足跡を「深化のいりぐちに立つ」と題し、今回の新作とした。

いままでずっと一人の方にモデル協力いただいていたけれど、今回はじめて新しい方に声をかけた。同じモデルさんに長期お願いする中で、いつのまにか彼女に自身の思いを重ねすぎて本来自分とは別の個体である女性の内面を感じとることが薄れてきたことに、うすうす気づいていた。
つまり思いが一方的すぎて、少し視野が限定されすぎたことへの不満を自分自身に感じた。
新たな女性を描くことで、客観的に人を感じるということ、そしてそこに自分自身の解釈や思いをのせて表現するという流れを取り戻したかった。
その選択は自分としては結果的に正解だった。
一歩離れて自分の思いと切り離した女性像は、彼女のカラー(あくまで私の主観だが)が生々しく表面ににじみでるものとなった。